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年金財政検証 政府の本音は「みんな働いてくれ」?

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
 
 

 公的年金の将来見通しを示す「財政検証」が8月27日、厚生労働省から発表された。5年に1度の財政検証は前回は6月に発表されたが、今年は7月の参議院選挙への影響を考慮して発表を延期したのではとの臆測も流れた。

 また、金融庁が6月初めに出した報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、老後の生活は年金だけでは困難で、平均2000万円の資産の積み立てが必要という内容だったことから、これも財政検証の発表を遅らせる要因になったのではと言われた。

 「財政検証」を読んで感じることは、政府は年金見通しを必要以上にわかりにくく見せようとしているのではないかということだ。論語から派生した言葉に「民をして、よらしむべし、知らしむべからず」(為政者は人民を従わせればよいのであり、その理由をわからせる必要はない)という支配者側の考え方があるが、難解な用語、わかりにくい算式を使うことで、普通の人が立ち入りにくいようにさせている感がある。

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。