
地方の私立大学が次々に地元自治体運営の公立大学に移行している。自治体の支援をテコに授業料を引き下げた結果、志願者が急増するケースが多く、大学再建の切り札のように見える。しかし、実際は全国の納税者から集めた税金に依存している。こうした状況を放置して良いのだろうか。
筆者は、高校時代まで長野県原村で育った。周囲を八ケ岳、南アルプスといった山々に囲まれた農村で、何キロも先まで田畑が広がる実家は最寄り駅まで車で30分。高校通学はバスと電車を乗り継ぎ片道1時間半かかった。
公立諏訪東京理科大学はすぐ隣の茅野市にある。昨秋、久しぶりの帰省時に「公立大化」のポスターを見て驚いた。1990年に短大として開学した当時、高校生だった筆者は地元に有名私大の「分校」ができたのを誇らしく感じたが、ちゃんと学生が集まるのか疑問に思っていたからだ。
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清水憲司
毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)
1975年、宮城県生まれ。高校時代まで長野県で過ごし、東京大学文学部を卒業後、99年毎日新聞社に入社。前橋支局を経て、東京経済部で流通・商社、金融庁、財務省、日銀、エネルギー・東京電力などを担当した。2014~18年には北米総局(ワシントン)で、米国経済や企業動向のほか、通商問題などオバマ、トランプ両政権の経済政策を取材した。