ベストセラーを歩く

高村薫「我らが少女A」現代人の脳内を拡大鏡でのぞく

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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 高村薫の新作長編小説「我らが少女A」(毎日新聞出版)はしみじみと面白い一冊だ。さまざまな人間模様を楽しみながら、時の流れに思いをはせ、世の無常を感じる。同時に現代とはどういう時代なのか、じっくりと考えさせられる。ミステリーの枠組みを超えて、小説を読む喜びを堪能した。

 作品の「現在」は2017年。東京・上池袋のアパートで、27歳の風俗店アルバイトの女性が同居していた男に殴り殺される。彼女は使い古した絵の具のチューブを持っていて、それは12年前に武蔵野の野川公園で殺された人が持っていたものだと生前に話していた。

 2005年に野川公園で殺されたのは、元・美術教師の67歳の女性。自宅で水彩画教室を開いていた。上池袋で殺された女性は、その教室の生徒で、元教師の孫の友人だった。

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。