藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

南米の突端フエゴ島「世界の果て鉄道」に流刑地の歴史

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ウシュアイア名物の地球最南端の鉄道「世界の果て鉄道号」(写真は筆者撮影)
ウシュアイア名物の地球最南端の鉄道「世界の果て鉄道号」(写真は筆者撮影)

 日本から所要33時間。“地球最南端の市”アルゼンチンのウシュアイアにたどり着いた筆者。南極クルーズに向かう富裕層の乗り継ぎ基地として、ありがちな観光地と化した姿にいささか落胆しつつも、重罪人の流刑地として開発された歴史に、寒冷な風土の厳しさを知る。そんな過去の遺産が“地球最南端の鉄道”だ。

 “地球最南端の鉄道”は、その名も「世界の果て鉄道」(南フエゴ鉄道)。ウシュアイア市街から10キロほど西に行った森の中に、ぽつんと始発駅「世界の果て駅」がある。始発がいきなり「果て駅」というのも変だが、線路延長は7キロと短く、線形はうねうねと蛇行して終点の「国立公園駅」に向かう。路線は終始、森か荒野の中なので、終点の「国立公園駅」も始発の「世界の果て駅」も、どちらも「果て」の度合いに変わりはないというところだ。

 この鉄道はもともとは、市街の西にある森林地帯の木を囚人に伐採させて町へ運ぶために、1909年に開業したもので、延長は25キロ、軌間は600ミリだった。1949年に洪水で寸断され1952年に廃止されてしまったが、1994年に西端の3分の1ほどが、軌間500ミリの観光鉄道として再建された。真新しい小さな蒸気機関車が、何両かの客車を引いて、まるでスイスの高原地帯のような景色の中を1日2~3往復している…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外109カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。