ベストセラーを歩く

又吉作品が“グダグダな思考”の中で問う「人間」とは

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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小説「人間」の刊行を記念したトークイベントに臨む又吉直樹さん=東京都渋谷区の紀伊国屋サザンシアターで2019年10月20日、手塚耕一郎撮影
小説「人間」の刊行を記念したトークイベントに臨む又吉直樹さん=東京都渋谷区の紀伊国屋サザンシアターで2019年10月20日、手塚耕一郎撮影

 又吉直樹の新作長編「人間」(毎日新聞出版)は読者にさまざまなことを考えさせる小説だ。登場人物たちが対話したり、議論したり、自問したりする。それに誘われて、読者もいろいろと思いをはせることになる。

 主人公たちは苦しんだり、悩んだりしている。考える内容は多様だ。表現とは何か。オリジナリティーとは何か。恋愛について。善悪について。血縁について。生きる意味について。合理性と非合理について。裏切りについて。

 いずれも明快な解答はない。時に自意識が空転し、時に感情に揺さぶられながら、登場人物たちはああでもな…

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。