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「ワークマン」と「ゴールドウイン」株価高騰の理由

エコノミスト編集部
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幅広い客層が訪れるワークマンの店舗
幅広い客層が訪れるワークマンの店舗

 上値が重い日本株の中でも、着実に需要をとらえて躍進を続ける銘柄がある。週刊エコノミスト11月19日号の巻頭特集「日本株 爆騰!銘柄」よりダイジェストでお届けする。【エコノミスト編集部・下桐実雅子、桑子かつ代】

作業員の姿がない土日のワークマン

 10月のとある日曜日の昼過ぎ。東京・杉並にある作業服大手ワークマンの店舗を訪れた。店内には軍手やヘルメット、作業靴、反射材の付いた安全ベスト、防水・防寒ジャケットなどがずらりと並んでいたが、若い女性や高齢者夫婦、妊婦の姿まであって驚いた。建設・工事のプロの作業員とおぼしき人はほとんどいない。

女性向けウエアが充実した「ワークマンプラスららぽーと沼津店」(静岡県沼津市)の店内=ワークマン提供
女性向けウエアが充実した「ワークマンプラスららぽーと沼津店」(静岡県沼津市)の店内=ワークマン提供

 東証ジャスダックに上場するワークマン株の勢いが止まらない。1997年9月に上場後、長く1000円を下回る値動きが続いたが、2018年初から上昇基調に転じて2000円を突破。あれよあれよと値を上げ、今年10月16日には一時9650円の過去最高値を付けた。

 業績も大幅に伸びている。11月5日に発表した19年4~9月期決算(単体)は、売上高が418億円と前年同期比45.2%増、最終(当期)利益も58億円と51.8%増加し、いずれも過去最高を記録。店舗数も全国848店舗(19年9月末現在)へと拡大し、フランチャイズを含めたチェーン全店の売上高は20年3月期、初めて1000憶円を突破する見込みだ。

 ワークマンのコンセプトは「働くプロの過酷な使用環境に耐える品質と高機能の製品を低価格で届ける」こと。防寒ジャケットや作業靴など、自社開発する商品も少なくない。歌手の吉幾三さんをテレビCMに起用するなどしてPRを続けていたが、4年ほど前から客層に変化の兆しが表れた。

 
 

妊婦から高齢者まで

 その一つが、雨天の屋外作業用の防水防寒着が土日によく売れるようになったこと。ワークマンの社員が調べると、バイクに乗る人たちが買っていると分かった。同じ時期、滑りにくい厨房(ちゅうぼう)用の靴が妊婦の間で売れるようになった。妊婦と見られる女性がツイッターで「滑りにくい靴がほしい」とつぶやくと、別の女性が「ワークマンなら滑らない靴がたくさんある」とコメントし、口コミで広まった。

 プライベートブランドのこの冬向けの防寒レインジャケットは3900円、超軽量シューズは980円。高齢者には軽くて動きやすい防寒着などの需要も高い。溶接作業などで着る火の粉が飛んでも燃えにくい服は、キャンプ好きが愛用。ケチャップやソースもはじくはっ水加工の服は子育て世代に人気だ。ワークマンの商品をカジュアルに着こなす「ワークマン女子」という言葉まで生まれた。

 より広い客層に向けて昨年9月、新業態の店舗「ワークマンプラス」を東京都立川市にオープンすると、瞬く間に137店舗(19年10月末)まで拡大した。

スキーウエアから事業転換したゴールドウイン

東京・原宿の「ザ・ノース・フェイス オルター」の店内
東京・原宿の「ザ・ノース・フェイス オルター」の店内

 アウターだと数万円の商品が中心とワークマンとは価格帯は異なるが、同じく客層を広げて快進撃を続けるのが、米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」などを扱うゴールドウインだ。株価は9月30日、一時9500円の過去最高値を付け、過去5年間の上昇率は実に10倍超。19年3月期は連結売上高、最終(当期)利益とも過去最高を更新し、11月6日発表の19年4~9月期でも連結の最終利益は前年同期比2.3倍の35億円を記録した。

 ゴールドウインが今年4月、東京・原宿にオープンした新業態の店舗「ザ・ノース・フェイス オルター」。コンクリートの打ちっぱなしのシックな店内に、黄色や赤といったカラフルなアウトドア向けジャケットなどが並ぶ。旗艦店をリニューアルして同時オープンした「ザ・ノース・フェイス マウンテン」と合わせ、原宿では直営5店舗を展開する。

 
 

 ザ・ノース・フェイスの日本での商標権を買い取り、「ザ・ノース・フェイス」ブランドで独自の商品も開発する。アウトドア用品としてだけでなく、機能性やファッション性の高い商品が若者の支持を集める。ベースキャンプで荷物を運ぶ際に使うバッグを一般仕様にした「ヒューズボックス」と呼ばれる四角い形が特徴のリュックは、軽くて口が広くモノが出し入れしやすいと小中学生にも大人気だ。

 好調な業績について、同社は「以前は卸型のビジネスだったが、00年から直営店を持って販売するよう事業構造を転換した。その成果がようやく表れてきた」と説明する。ゴールドウインと言えばスキーウエアが中心だったが、スキー人気が頭打ちとなった90年代後半など、これまで経営危機を3度経験。小売りの比率を高めて、ブランドの認知度を着実に上げ、今年9月時点の直営店は152店を数える。

登山用の製品がそろう東京・原宿の「ザ・ノース・フェイス マウンテン」の外観
登山用の製品がそろう東京・原宿の「ザ・ノース・フェイス マウンテン」の外観

ボックス圏相場で異彩を放つ

 11月に入って連日、年初来高値更新を続けた日経平均株価。だが、17年以降は主に2万~2万4000円のボックス圏での値動きが続き、米中貿易摩擦や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策などに振り回される展開だ。今年11月6日までの過去5年間の上昇率は4割弱にとどまる中で、ワークマン株やゴールドウイン株の躍進はひときわ輝きを放っている。

 日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは「消費増税などで景気動向も不透明な中、成長機会を逃さず新しいビジネスチャンスを着実に見つけていく企業に関心が集まってきた。そうした企業には中小型株が多い」と分析する。

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 この記事は、週刊エコノミスト11月19日号の巻頭特集「日本株 爆騰!銘柄」の記事をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

週刊エコノミスト11月19日号

 
 

エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。