週刊エコノミスト・トップストーリー

「世界の牛肉・豚肉大争奪」中国豚コレラの影響深刻

エコノミスト編集部
  • 文字
  • 印刷
 
 

 世界的に所得水準の向上で牛肉消費が急増。一方で、中国を中心としたアフリカ豚コレラ・ショックが世界の豚肉市場に甚大な影響を及ぼしている。週刊エコノミスト11月26日号の巻頭特集「食肉大争奪」より、ダイジェストでお届けする。【エコノミスト編集部/監修=柴田明夫・資源・食糧問題研究所代表】

輸出される牛肉の3割は中国へ

 
 

 牛肉でも中国の存在感は高まっている。米農務省の最新データによれば2020年の世界の牛肉生産(予想)は米国、ブラジル、EU(欧州連合)の3カ国・地域で世界の5割を占めるが、4番目に中国が位置している。消費では米国に次いで中国が年950万トンと世界2位、世界の牛肉消費の16%を占めている。

 付加価値の高い牛肉は貿易比率が18%と豚肉の同7%より高い。その貿易でも、20年には輸出される牛肉の3割の290万トンが中国の手にわたる。背景にあるのは、アフリカ豚コレラの影響よりも、中国の経済成長と脂身の多い牛肉のうまさを中国人が知ったことが大きい。

 
 

 輸出ではブラジル、インド、米国、豪州の上位4カ国が牛肉輸出全体の6割超を占めている。インドが牛肉輸出で2位に位置しているのは、中近東や北アフリカ、東南アジアのイスラム諸国で牛肉の需要が急拡大しているためだ。

中国「豚コレラ」で豚の生産量激減

 
 

 一方、豚肉大国・中国でのアフリカ豚コレラの感染拡大は、世界の豚肉市場に甚大な影響をもたらしている。

 豚肉の世界生産は2016~18年の3年は1億1000万トンで推移していたが、中国でアフリカ豚コレラの感染が拡大したことで20年には9500万トンまで減少する見込みだ。とくに中国の減少が大きく、18年に5400万トンだった生産量は20年に3400万トンまで減少する。豚肉消費も同様に17年の5600万トンから20年には3800万トンまで急減する見込みだ。

 
 

 豚肉生産の減少が消費の減少分を上回っているため、国際市場で中国の存在感は高まっている。中国の豚肉輸入は15年の100万トンから20年には350万トンと3.5倍に拡大する見込みだ。この結果、世界の豚肉輸入に占める中国のシェアは約35%に達する。

 これに対し、豚肉を輸出できる余力がある国・地域は限られており、豚肉輸出全体の9割はEU、米国、カナダ、ブラジルが占める。中国の豚肉輸入を下支えしたのはEUで、15年に239万トンに過ぎなかったEUの豚肉輸出は、20年には390万トンまで増える。同期間の米国の豚肉輸出も227万トンから331万トンまで拡大する。

    ◇    ◇

 この記事は、週刊エコノミスト11月26日号の巻頭特集「食肉大争奪」の記事をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。