ベストセラーを歩く

大沢在昌「新宿鮫Ⅺ」警察小説の魅力を余すところなく

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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 警察小説が相変わらず人気だ。その魅力はいくつかある。組織の中で個人はどうあるべきかという問題がギリギリのところで描かれるし、犯罪を通して時代に対する思いを深めることもできる。もちろん、謎解きも面白いし、人間模様を楽しむこともできる。

 中でも、大沢在昌の「新宿鮫」は多くの読者に支持されているシリーズだ。キャリア警察官だが、警察内部のトラブルで孤立状態になりながらも踏ん張っている警部・鮫島が主人公。スピード感のある筆致と入念な取材で毎作、読み応えのある世界が繰り広げられる。

 新刊の第11作「暗約領域 新宿鮫Ⅺ」もたちまちベストセラーになっているが、読んでみると注目されるのも納得できる。ページをどんどんとめくってしまうストーリー展開だ。これまでの10作を読んでいなくても楽しめることに変わりなく、むしろ、この作品から薦めたいぐらいだ。

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。