ニッポン金融ウラの裏

「手数料ゼロ」が証券業界の“不毛な消耗戦”になる?

浪川攻・金融ジャーナリスト
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 2020年、金融業界は一段と厳しい経営環境に突入することが避けられそうもない。これまで地銀を筆頭に、銀行の収益悪化が話題の主役だったが、今後は、証券業界に焦点が当たる可能性が高い。そうしたなかで、証券会社の経営改革が本格化するかどうかが最大の注目点と言える。

 ここに来て、証券業界で話題になっているのはネット専業証券各社による株式売買の取次手数料引き下げ合戦だ。その発端となったのは、米国の大手証券会社、チャールズ・シュワブによる「手数料ゼロ」戦略にほかならない。米国では証券各社が追随し、またたく間に「株式売買手数料はタダ」の世界が出現した。

 わが国のネット専業証券各社もこの流れに追随したわけだが、米国の動きに比べ、明らかに「不毛な消耗戦」の気配が漂う。というのは、米国の場合は、「手数料ゼロ」を掲げる各社の収益構造が劇的な変化を遂げているからだ。

 たとえば、チャールズ・シュワブをみると、その収益の過半は手数料収入ではなく、貸し出しに伴う金利収入を中心とする「資金収益」となっている。例えば、株式などの有価証券を担保とした「証券担保ローン」だ。こうしたローンの金利収入が収益構造の柱になっており、取次手数料をタダにして顧客数を拡大させることが、収益拡大のメインストリートになっている。

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。