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「車載デバイスで覇権争い」ソニーEV本格参戦の波紋

エコノミスト編集部
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自動運転機能などを備えたソニーの次世代車と吉田憲一郎社長
自動運転機能などを備えたソニーの次世代車と吉田憲一郎社長

 クルマの自動運転や電動化の波は、新しい市場を生み、自動車業界には変革を迫る。勝ち残る企業の条件とは。週刊エコノミスト1月28日号の巻頭特集「自動車革命で伸びる会社」よりダイジェストでお届けする。【エコノミスト編集部=大堀達也、村田晋一郎】

スマホからクルマへ

 「過去10年のメガトレンドはスマートフォンをはじめとするモバイルだったが、次はモビリティー(クルマ)になる」。1月7~10日、米ラスベガス市に155カ国4500社が集まった世界最大級の技術見本市「CES2020」で、自動運転システム搭載の電気自動車(EV)を披露したソニーの吉田憲一郎社長は、自動車関連事業の拡大に向けて意欲を見せた。

 毎年、年初に開かれるCESは、数年先までの産業動向を占う場だ。2010年代以降、自動車関連の出展が徐々に増え、今年、ソニーがクルマへの本格参戦を表明した。

 背景には、クルマに起きている「100年に1度の大変革」がある。(1)C=コネクテッド〈インターネットとの接続〉、(2)A=オートノマス〈自動運転〉、(3)S=シェアリング〈共有〉、(4)EV〈電動化〉――「CASE(ケース)」だ。

 
 

 過去にネットビジネスで米IT企業の後塵(こうじん)を拝したソニーは、クルマで巻き返しを図ろうとしている。今回の車両開発のプロジェクト名は「VISION-S(ビジョン・エス)」。試作車は自動ブレーキや自動車線変更など先進運転支援システムを装備。人や障害物を検知するカメラ用センサー(CMOS〈シーモス〉)など数種類のセンサーを30個以上搭載する。

 ソニーはCMOSで世界シェア50%と首位だが、その多くはモバイル向けだ。スマホ市場が成熟した今、次の成長分はクルマになると見ている。ソニーの狙いは“車載デバイス(部品)”を売ることだ。

 デロイト・トーマツ・コンサルティングの試算では、世界自動車産業全体の総付加価値は15年の約450兆円から30年には約630兆円に上り、約180兆円の増加が見込まれる。特に伸びが大きいのは「素材・部品」(59兆円増)、テレマティクス(クルマでさまざまなコンテンツを楽しむ)やシェアリングなどの「利用」(39兆円増)。完成車は26兆円増加するが、全体に占める比率は23%から20%に低下するとしている。

CASEが生む構造変化

 CASEが自動車業界の構造、とりわけ完成車メーカーの地位を根底から揺さぶっている。ソニーの試作車は象徴的だ。ビジョン・エスの車両は、設計で独ボッシュ、独コンチネンタルの知見を取り入れ、製造はカナダのマグナ・インターナショナルの子会社マグナ・シュタイヤー(オーストリア)が手掛けるなど、開発段階で世界の大手部品が集結した。

 これらメガサプライヤーは自動車を製造できる力を持っている。特にガソリン車に比べ部品数が少ないEVは、製造のハードルが下がると見られ、今後メガサプライヤーの中には、委託者のブランドで生産(OEM)に乗り出す会社が出てくるかもしれない。

 
 

 一方、自動運転は、歩行者が混在する公道での完全自動運転(レベル5)は難易度が高く実現はまだ先と見られる。しかし、高速道路、大学や工場などの私有地、無人バス専用車線など整備された低速環境では、すでにレベル5が実用段階にある。

 電動化や自動運転、コネクテッド化が進展すると、将来は“移動事業会社が遠隔で運行・管理する自動運転EV”が、公共交通とともに人々の主要な移動手段になると見られる。

トヨタは「未来都市」建設へ

 トヨタは今回のCESで「スマートシティー」の構想を発表。20年末に閉鎖する東富士工場の跡地約70万平方メートルを活用して、クルマと街がつながるコネクテッド・シティーとして実証実験都市「WovenCity(ウーブン・シティ)」を建設する計画を打ち出した。その中では自動運転車が走り、各家庭には家事をこなすロボットも導入する。

 世界を見渡すと、グーグルやアップルといった米IT企業も、同様にスマートシティー構想を急ピッチで進める。ただ、トヨタの取り組みを見る限り、“製造業に比べると雇用を生まないIT”路線とは一線を画す新たな成長路線を探っているようにも見える。トヨタの米国子会社でベンチャーへの投資事業を行う「トヨタAIベンチャーズ」の出資先企業を見ると、自動運転とともにロボット関連のベンチャーが目立つ。

 トヨタはヒューマノイド(人型)ロボットの開発も進めるが、将来、その主力製品がクルマから量産型の家庭用ロボになったらどうか。“ロボットの生産”ではITを駆使した無人工場など「インダストリー4.0」と呼ばれる製造革命の進展で多くの人手を必要としないかもしれない。

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 この記事は、週刊エコノミスト1月28日号の巻頭特集「自動車革命で伸びる会社」の記事をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

週刊エコノミスト1月28日号

 
 

エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。