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書いたことを知られずに「遺言書」を確実に残す方法

エコノミスト編集部
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 改正民法が4月1日、施行される。契約に関わる債権法、遺産などに関わる相続法のルールが変わる。目玉の一つは、法務局に自筆証書遺言を預けられるようにする「遺言書保管法」の新設。週刊エコノミスト2月25日号「契約のルールが変わる! 民法改正」の巻頭特集より小堀球美子弁護士のリポートをダイジェストでお届けする。

思いのたけを書ける自筆証書遺言

 民法の相続関係部分(相続法)の改正で、配偶者居住権(亡くなった人の配偶者が自宅に無償で住み続けられる権利)と併せて施行されることになったのが「遺言書保管法」、つまり法務局に自筆証書遺言を預けておくことができる制度だ。

 民法は、有効な遺言の要式として、(1)公正証書による遺言、(2)自筆証書遺言、(3)秘密証書遺言--の三つを定めている(死亡の危機に迫られた場合にのみ認められる「危急時遺言」を除く)。

 公正証書遺言は公証役場で公証人が作成するため、要式の不備を指摘されることはない。公証人は遺言者が認知症の治療を受けている場合は診断書を持参させるなどの対応を取るので、「遺言能力がない」などの理由で無効を主張されるリスクもある程度防げる。

 
 

 ただし、公証人が作成に介入するため、遺言者が「思い」を書きつづるのが難しい。また、2人の証人が必要となるので、遺言の内容を秘密にすることもできない。費用が数万円から十数万円かかるというデメリットもある。

 一方、自筆証書遺言は、遺言者が自由に書くことができるので、思いのたけをぶつけることができる。方法も手軽で、費用もかからないため、気軽に書ける。一方で、全文を手書きで書く必要があるため、書き損じで無効になることがあるほか、これまでは保管方法も定まっていなかったため、紛失や偽造・変造の恐れもあった。

 そこで、改正相続法では、自筆証書遺言の財産目録の部分を別紙としてワープロで書けるようにし、財産目録を添付した場合の訂正加筆の方法を柔軟にした(2019年1月13日施行)。さらに、遺言保管のルールを定めることで、より気軽に、かつ確実に、自筆証書遺言で遺産の処分をすることができるようにした(20年7月10日施行)。

自筆証書遺言を法務局に預けるには

 遺言者はまず、遺言の全文を自筆で書いて(財産目録の別紙を除く)、作成年月日を記し、名前を書いて印鑑を押す。封をしない状態で法務局へ持っていき、遺言の形式が法律に合っているかどうかを確認してもらい、遺言を預ける。

 この際の法務局とは、遺言者の住所か本籍、あるいは遺言者の不動産がある都道府県の法務局であり、遺言者本人が赴き、本人確認(運転免許証などで証明)をしてもらう必要がある。遺言者本人が所定の申請書を書くので、偽造やなりすましを防止でき、遺言者に「遺言能力」(遺言書の内容を理解して作成する能力)が備わっていることを、法務局の職員のフィルターを通してある程度、担保してもらうことにもつながる。

 
 

 遺言者は、いつでも遺言書保管の申請を撤回し、遺言をしなかった状態にすることができる。もちろん、撤回後、何度でも再申請することができる。

 さらに、これまでの自筆証書遺言は家庭裁判所で検認の手続きを取る必要があったが、法務局で保管されている場合には、その手続きは不要になる。

 相続法改正のもう一つの目玉である配偶者居住権は、配偶者の住まいを保証したうえで、配偶者に住居以外の遺産をも与えることができる制度だ。遺言者は遺言で配偶者居住権を設定しておくことで、残される配偶者の生活を心配せずに済む。配偶者居住権の設定は施行日の4月1日以降に作成した遺言書で有効になる。

遺言書の存在を知られずに済む

 Aさんが後妻のBさんの生活を守るため、何としても自宅マンションに配偶者居住権を設定しておきたいとしよう。自筆証書遺言を作り、遺言書保管制度を利用すれば、Bさんは、例えば前妻の子Cさんに遺言書の存在を知られるリスクを避けることもできる。

 家庭裁判所の検認を必要とする場合は、一般に相続人など関係者に検認期日の呼び出し状が送付される。しかし、法務局での遺言書保管制度を使えば検認が不要となるため、BさんはCさんら他の法定相続人に分からないように、秘密裏に相続の手続きを進めることができるわけだ(ただし、呼び出し状の送付とは別の事情で知られる可能性は排除できない)。

 配偶者の残りの人生を保護するという意味で、今回の法改正にはかなりの効果があるといえる。参考までに、自筆証書遺言で配偶者居住権を設定する場合の書き方を図で示した。これを機に、読者も自筆の遺言書に「思い」をつづってみてはどうだろうか。

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 この記事は、週刊エコノミスト2月25日号の巻頭特集「契約のルールが変わる! 民法改正」の記事をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

週刊エコノミスト2月25日号

 
 

エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。