藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

カナダ・ハリファクス「センスよい街の成熟」とは

藻谷浩介・地域エコノミスト
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カナダ・ノバスコシア州の州都ハリファクスの港は雨に煙っていた(写真は筆者撮影)
カナダ・ノバスコシア州の州都ハリファクスの港は雨に煙っていた(写真は筆者撮影)

 「赤毛のアン」に親しんだ世代は、もうシニアになっているのだろうか。作中で彼女が少女時代を過ごしたカナダのプリンスエドワード島は、バブル期には日本の若い女性の大人気旅行先だった。しかし大学時代を描く第3作「アンの愛情」の舞台となったキングスポートとなると、そのモデルがすぐ隣のノバスコシア州の州都ハリファクスであることを知る人は、当時から少なかっただろう。日本と縁の薄いこの北米東端の小都会は、どんな町なのか。

 ニューファンドランドのセントジョンズから南西に空路で2時間少々。着いたハリファクスは、米大陸の東端に複雑な形状で延びたノバスコシア半島の中央部に位置するカナダ大西洋岸最大の町である。といっても人口は広域で40万人ほどなのだが、南東に広がる大西洋から北西へと、深く切れこんだ湾に面し、欧州に向けたカナダの玄関口の位置づけを持つ。筆者は次のボストン行きへの乗り継ぎの間に、空港に荷物を預けて市内を往復した。

 空港から35キロ離れた市街へ、タクシーは定額制で片道6000円だった。運転手は、アフリカ北東部のエリトリア(独裁政権の強権支配で知られる)出身の、陽気な黒人である。「カナダは寒いが平和で快適だ」と言う。30分弱で市街地の南の方にあるハリファクス駅に着いた。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。