高齢化時代の相続税対策

相続財産が少ないほどモメやすい「疑心暗鬼」の心理学

広田龍介・税理士
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 東京に住むIさん(76)の兄で、東北の実家に住むKさん(80)が亡くなったのは、2018年11月のことだった。IさんとKさんは2人兄弟。Iさんは半世紀以上前に故郷を後に東京に進学し、卒業後はそのまま都内で就職し家庭を持った。兄のKさんは実家の農業を継ぎ、夫婦で一緒に頑張って田畑を守ってきた。

「万一の時も心配しないで」

 だが数年前、Kさんの妻は認知症となり、高齢者施設に入居することになった。Kさん夫婦に子はない。妻が施設に移ると、さすがにKさん一人だけで農業を続けていくのはかなりの負担になった。とはいえ田畑を放置するのも維持管理に費用がかかる。悩んだ末、Kさんは思い切って田畑を売却することにした。

 売却で得たお金は、妻の施設費用やKさん自身の生活費になった。「自分に万一のことがあっても、めいに葬儀費用を預けているから心配しないでほしい」。生前のKさんがそう話していた日のことを、Iさんはよく覚えている。

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。