名家のルーツ

「水銀体温計に梅毒薬」森下仁丹の歴代ヒット商品

森岡浩・姓氏研究家
  • 文字
  • 印刷
森下仁丹=2020年3月16日、田中学撮影
森下仁丹=2020年3月16日、田中学撮影

 「仁丹」といえば口中清涼剤として有名だ。かつて銀色の小さな粒は携帯できる薬という位置づけだった。仁丹を販売する森下仁丹の前身「森下南陽堂」も薬種商として創業している。

 森下仁丹の創業家の森下家は、備後国沼隈郡(ぬまくまぐん)鞆町(ともちょう、広島県福山市)で撫(なで)屋と号した旧家だ。江戸時代後期の12代目当主の茂右衛門の三男、佐野右衛門はいったん地元にある沼名前(ぬなくま)神社宮司の大宮家の養子となったが、森下家に跡継ぎがいなくなったことから家に戻って14代目を継いだ。

 維新後、佐野右衛門は煙草(たばこ)製造業を始めたものの失敗したらしい。その長男の博に、早くから商売を身につけさせるべく、9歳で備後府中(広島県府中市)の煙草商に奉公に出した。1882(明治15)年、佐野右衛門が死去して15代目を13歳で継いだ博は、15歳で大阪に出て心斎橋の舶来小間物問屋「三木元洋品店」へ丁稚(でっち)奉公に入った。奉公人としての約束の期間である年季が明けると、1893年に大阪・…

この記事は有料記事です。

残り1222文字(全文1661文字)

森岡浩

姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。