名家のルーツ

「いいくすりです」太田胃散創業者は波乱の人生

森岡浩・姓氏研究家
  • 文字
  • 印刷
太田胃散=2020年3月18日、田中学撮影
太田胃散=2020年3月18日、田中学撮影

 最近はタレントの笑福亭鶴瓶やDAIGO、河北麻友子を起用し、「ありがとう、いいくすりです」のフレーズで有名なのが胃腸薬・太田胃散のCMだ。この薬を製造販売しているのが株式会社太田胃散。商品名を会社の正式名称にしているケースは珍しい。

 太田胃散を創業した太田信義は波乱の人生を送った。太田家はもともと下野壬生(みぶ)藩(栃木県壬生町)の儒学者の家系だ。江戸時代後期、壬生藩の藩校「学習館」で師範を務めていた太田謙次郎は、藩士の谷家から養子を迎えた。その養子、源治郎が太田家を継ぎ、後に信義と改称した。

 信義は幕末に江戸へ遊学していたさなか、情勢を探るべく接触した水戸藩士で尊王攘夷(じょうい)派の天狗党首領格の藤田小四郎の同志となり、天狗党の乱が起こるとそれに連座して壬生で捕縛され、蟄居(ちっきょ、自宅謹慎)の身となった。しかし、謹慎中に両親が死去すると脱藩して銚子に潜伏。大政奉還が起こると江戸に出て吉原でロウソクの行商をして糊口(ここう)をしのいだという。

この記事は有料記事です。

残り999文字(全文1430文字)

森岡浩

姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。