藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

ベトナム・ハノイ「2000年前の独立指導者」に触れる

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ハノイは多くの芸術家の住むアートの町でもある(写真は筆者撮影)
ハノイは多くの芸術家の住むアートの町でもある(写真は筆者撮影)

 2016年4月。20年ぶりに訪れたベトナムの首都ハノイの旧市街は、この間の同国の経済の大発展にもかかわらず、フランス植民地時代に整備された中層建築が並ぶ、美しい風情を保っていた。20年前には2カ月間も仕事でホテルに缶詰めで果たせなかった市街地探訪を、この機会に、足が疲れて動かなくなるまで試みる。

 ハノイ都心の平日朝は、バイクの洪水だ。車も走っているが、その十数倍の数のバイクが、しかも多くは2人乗り、3人乗りで、道を埋めている。交差点の信号が赤になると、スズメの群れのように密集して並んで青を待ち、青になると一斉に“ゼロヨン”状態で走り始める。彼ら自身、信号で止まるたびに新たなチェースを楽しんでいるような感じだ。

 道行く人の交わすベトナム語は、「チャン」とか「ニャン」とか聞こえる音が多く、人懐っこく響く。カンボジアのクメール語などと一緒にオーストロアジア語族に分類されており、中国語やタイ語などとの近縁関係はない。長江流域で稲作を営んでいた民が話していた言葉で、漢人の南下と連動して南下、インドシナに定着したと言われている。母音も子音も日本語よりはかなり多く、中国語の影響で声調もあって、日本人には発音が難しい…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外109カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。