高齢化時代の相続税対策

「うつ病の長女が心配」母が次女に託した遺言書

広田龍介・税理士
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 東京在住のS子さん(88)は1978年に夫を亡くした。当時、娘2人はともに大学生だったが、それぞれ無事に卒業し、大手企業に就職できた。86年施行の男女雇用機会均等法よりずっと以前の時代だ。社会人として巣立っていく娘たちの姿を見て、S子さんは「母親として自分の務めは果たせた」と胸にこみ上げてくるものがあった。

 同じ家庭で育った姉妹だというのに、長女と次女はまるきり性格が異なっていた。生真面目な長女は、就職したころからバリバリと仕事をこなし、帰宅はいつも深夜近くというキャリアウーマン。それとは対照的に、天真爛らんまんな次女は、同僚や友人と飲み会や旅行を満喫しながら、仕事も楽しくしようというタイプだった。

 S子さんは内心、長女の結婚が早いのだろうと思っていたが、実際に母子3人家庭を先に離れたのは次女のほうだった。28歳のときに結婚し、東京都内に新居を構えた。夫は地方出身で、大学進学で上京して、東京で就職したが、一人息子であるため、いずれは地元に戻ることになるという話だった。S子さんは次女の幸福を祝いながらも、いずれは離れた土地に行ってしまうのだなと、一抹の寂しさを感じていた。

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。