藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

ホーチミン「サイゴン陥落」後の市場主義的発展の景色

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ホーチミンの超高層ビルの展望台から。外壁を清掃する若者と目が合った(写真は筆者撮影)
ホーチミンの超高層ビルの展望台から。外壁を清掃する若者と目が合った(写真は筆者撮影)

 ホー・チ・ミン。漢字で書けば胡志明。ベトナム戦争のさなかの1969年に死去した、国父のような存在だ。共産党国家の指導者の中では数少ない、個人崇拝を否定し、粛清にも手を染めず、蓄財もしなかったカリスマである。その名前を冠したホーチミン市は、旧称サイゴン。ホーチミンの北ベトナムと対峙(たいじ)した南ベトナムの旧首都であり、今でも華僑が根を張る商都だ。共産党支配の国の中にあって民間活力の象徴であるこの町の今とは。

 2017年4月。ハノイから南に、ベトナム航空のエアバス330で2時間、片道1万5000円。国内最大の都市ホーチミンに着いた。1996年の仕事でのハノイ滞在の際に、2泊だけ出張して以来の訪問である。空港は当時と変わらず、都心から北西にわずか7キロと便利な場所にあるが、ターミナルは日本政府のODAで真新しくなっていた。

 都市圏人口は1000万人を超えているというホーチミンだが、ハノイ同様にまだ軌道系の都市交通機関はない。パリに似せてフランス人が造った街路は複雑に入り組み、平日夕方の渋滞で、タクシーは短い距離に時間を要した。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外109カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。