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米上場の中国企業「ラッキンコーヒー」不正会計の波紋

趙瑋琳・伊藤忠総研主任研究員
中国で人気の新興コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー」の不正経理は市場に衝撃をもたらした
中国で人気の新興コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー」の不正経理は市場に衝撃をもたらした

 新型コロナウイルスの感染拡大を経て、中国の社会や経済はどこへ向かうのか。私たちが知らない中国ビジネスの最新事情を伊藤忠総研主任研究員の趙瑋琳(ちょう・いーりん)さんがリポートする。

中国でスタバに挑む新興チェーン

 中国の大手検索会社バイドゥの創業者であるロビン・リー氏はかつて、「米国上場が夢だった」と語った。米国のシリコンバレー勤務時代に、旺盛な起業家精神を持つベンチャー企業が米国上場を経て、順調に成長する姿を多く目にしたからだ。

 多くの中国人起業家にとって、米国上場は一つの願望だ。それは自らの成功を象徴するだけでなく、世界から資金を調達し、自社のビジネスが世界から認められることで、これ以上誇らしいことがないと考えるからだ。

 近年、とりわけネットビジネス関連の中国企業が米国上場に積極的だ。2019年には中国企業33社が米国で上場を果たしたが、その大半はネット系金融サービスやオンライン教育、電子商取引…

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伊藤忠総研主任研究員

 趙瑋琳(ちょう・いーりん)。1979年、中国瀋陽市生まれ。2002年に来日。08年東工大院社会理工学研究科修了、博士号取得。早大商学学術院総合研究所、富士通総研を経て19年9月から現職。専門は中国経済、デジタルイノベーションと社会・経済への影響など。プラットフォーマーやテックベンチャーなど先端企業に詳しい。早大商学部非常勤講師も務め、論文執筆・講演多数。近著に「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」(東洋経済新報社)。