産業医の現場カルテ

43歳経理担当者「仕事の効率が落ちた」原因は“眼”?

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 ある中堅企業に勤める上田さん(仮名、男性)は経理を担当しています。ある年の年度末に残業時間が大幅に増え、その会社の産業医である私を訪ねてきました。病気のもとになるようなリスクは見つかりませんでしたが、上田さんとの話の中で気になることがありました。

 従業員の長時間労働による健康リスクを見逃さないため、2019年4月施行の働き方改革関連法で、1カ月の時間外・休日労働時間が80時間以上の従業員から申し出があれば、産業医の面談(面接指導)を行うことが会社に義務づけられました。

 上田さんの長時間労働は繁忙期の一時的なもので、面談では健康リスクは見つかりませんでした。ただ業務中に気がかりなこととして、「夕方になって薄暗くなると、小さな字や周囲が見えにくい。仕事の効率も下がって余計な時間がかかっているように思う」と言いました。問診票を見ると、上田さんは43歳。「ひょっとすると老眼が始まっているのかもしれない」と考えました。

 目の老化は40代で少しずつ始まると言われています。通常、目はカメラのレンズにあたる「水晶体」の厚さを調節し、近くのものや遠くのものにピントを合わせています。しかし年齢とともに水晶体はかたくなります。そのためピントの調節がしにくくなり、時に近くのものが見えにくくなります。これが老眼です。

 スマホなどの細かい字を読むときにやや目から対象を離さないと読みづらかったり、近くで細かい字を見た後に遠くを見るとぼやけて時間とともにピントが合ったりすることがあると、老眼が始まっている可能性が高いです。

 老眼のみならず、目が見えにくい状態が続くと眼精疲労が起こります。眼精疲労が積み重なる…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。