
世界で猛威を振るう新型ウイルスは、資本主義のあり方に変化をもたらすのか。週刊エコノミスト5月26日号の巻頭特集「歴史でわかる経済危機」より、貨幣論の第一人者、岩井克人・東京大学名誉教授へのインタビューをお届けする。(聞き手=エコノミスト編集部・浜田健太郎/岡田英)
米国は日本を反面教師に
--新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、国際通貨基金(IMF)は1930年代の大恐慌以来の危機になると指摘した。
◆岩井克人さん 大恐慌以来の危機であり、リーマン・ショック(2008年)をはるかに超えた影響を及ぼすと私も思っている。米国の失業率が30%に達するとの予想もある。欧州各地でロックダウン(都市封鎖)しており、商業が壊滅的な状態だ。日本政府は対応が後手後手に回り、経済対策も期待に乏しい内容だ。
--米連邦準備制度理事会(FRB)が2兆3000億ドル(約250兆円)の緊急資金供給策を4月9日に発表し、投機的格付け債券(ジャンク債)の購入にも踏み込んだ。
◆私の知る限りFRBがそのような政策を採用したことはない。ジャンク債まで買い入れるという「禁じ手」を行ったこと自体、事態が切迫したことの表れだ。これが悪いメッセージとなり市場(の規律)が緩むか、逆反応(相場が暴落)するのか、どちらに転ぶのか分からない。
--リーマン・ショックでは、FRBが日本の金融危機対応を反面教師として研究して、危機を最小限に食い止めたという評価がある。
◆当時のバーナンキFRB議長は、日本のバブル崩壊と「失われた20年」の研究で経済学界での業績を上げた人だ。彼らが学んだことは、“too little, …
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エコノミスト編集部
藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。