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竹中平蔵氏「コロナで月5万円ベーシックインカムを」

エコノミスト編集部
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竹中平蔵さん
竹中平蔵さん

 新型コロナウイルスによる危機は日本の経済社会に何をもたらしたのか。政府の対応は適切か。週刊エコノミスト6月2日号の巻頭特集「緊急提言 コロナ危機の経済学」より、小泉政権で経済財政担当相を務めた竹中平蔵東洋大教授・慶応義塾大名誉教授へのインタビューをダイジェストでお届けする。(聞き手=エコノミスト編集部・浜條元保/神崎修一)

医師が少ないのは既得権益者が反対したから

 --世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。

 ◆竹中平蔵さん パンデミック(世界的大流行)が終わった後は、必ず別の世界が来る。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の後はネット通販が一気に伸び、数年後に中国のアリババが、世界最大のEコマース(電子商取引)企業の米イーベイを追い抜いた。1918年に発生したスペイン風邪では欧州で被害が大きく、米国のGDP(国内総生産)が欧州全体を追い越し、その後米国経済が世界の中心になった。

 危機は社会が持つ強さと弱さが一気に露呈する。日本は新型コロナによる死者の割合が低いが、遠隔診療や遠隔教育ができない。在宅勤務もあわててやっている状況だ。デジタル化とそれに伴う規制緩和が徹底的に遅れていた。

 
 

 --変化に対応するには何が必要か。

 ◆「ポストコロナ構想会議」が必要だと思う。11年の東日本大震災後に、政府は復興構想会議を設置し、提言をまとめた。目の前のことで精いっぱいかもしれないが、構想を持ち、将来を見据えながら今の政策を決めないといけない。

 今は医療現場が大変だ。日本は医者の数が少ない。人口に対する医師数は、ドイツやノルウェーの半分だ。既得権益者たちが新しい医学部を作らせなかった。遠隔診療も医師会が長く反対してきた。厚生労働省も目の前の利害調整しか、してこなかったのではないか。

徹底して資金繰りを支えよ

 --政府内に司令塔が、不在という印象がある。

 ◆政府全体が面となって政策を議論する仕組みになっていない。安倍晋三首相や菅義偉官房長官の頑張りは評価すべきだ。後のところは縦割りで、各省がこれまで実施してきた政策を少し広げて持ってくるだけだ。官僚の言うことを信用しているだけではだめだ。(郵政民営化担当相などを務めた)小泉内閣では首相の後押しも大きかった。自分が「辞めてもいいからやりきる」という思いを持って、進めていかないと達成できない。

日曜日の昼間でも人通りが少ない東京・渋谷のスクランブル交差点=2020年4月5日、本社ヘリから手塚耕一郎撮影
日曜日の昼間でも人通りが少ない東京・渋谷のスクランブル交差点=2020年4月5日、本社ヘリから手塚耕一郎撮影

 --政府は全国民への一律10万円の現金給付を実施する。

 ◆これまでの現金給付は、消費刺激効果がなかったと言われるが間違いだ。これは景気刺激策ではなく、生活救済策だ。10万円の給付はうれしいが、1回では将来への不安も残る。月に5万円を国民全員に差し上げたらどうか。マイナンバー取得を義務付け、所得が一定以上の人には後で返してもらう。これはベーシックインカム(最低所得保障)といえる。

 --今後は、どのような政策が必要か。

 ◆優良企業でも突然死してしまう可能性があるので、徹底して資金繰りを支えることが必要だ。支援は相当大きなスケールで実施しないといけない。商工中金や信用保証協会を通じたこれまでの形では追いつかない。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は早い段階で約250兆円の資金を用意し、社債の買い入れをすると発表した。中央銀行がやらないといけないことだ。日銀は関東大震災の時に震災手形を引き受け、その後の金融危機を招いた苦い経験がある。モラルハザードを起こさないようにして、十分な資金を供給することが必要だ。

 --財政再建が遠のいたとの見方もある。

 ◆日本は財政赤字を増やしたが、円安になっておらず、株価はそんなには下がっていない。日本の財政に関し、当面深刻な問題はないということが証明されたが、中期的な問題として残る。今は経済を崩さないように、財政資金を惜しまず、経済を支えることで、第2のリーマン・ショックを防がないといけない。

 
 

9月入学には賛成

 --多くの労働者が在宅勤務を余儀なくされている。

 ◆今は、労働の対価は時間で測られるが、成果で測られるよう変えないといけない。家族の世話をしている時は仕事から離れても、別の時間で成果を出せばいい。時間で縛られたら在宅勤務はできない。成果で評価することに対し、2年前の法改正時に、世論は「残業代ゼロ」だとレッテルを貼った。考えを変えないと在宅勤務は定着しない。

 --休校の長期化に伴い、9月入学について議論が始まった。

 ◆賛成だ。ただ、9月入学をやるだけでは意味がない。同時に、いざという時に備え遠隔教育ができるシステムを整備することが必要だ。安倍内閣の成果と期待されたインバウンド(訪日客)や東京オリンピック・パラリンピックが残念ながらコロナで揺らいでいる。9月入学の成果、教育改革を安倍内閣のレガシー(遺産)にすればいい。タブレット端末も通信速度の違いなどで格差が拡大する可能性があり、対策を取る必要はある。

竹中平蔵氏略歴

 たけなか・へいぞう 1951年生まれ。一橋大卒。ハーバード大客員准教授などを経て、2001~06年の小泉政権で経済財政担当相などを歴任。16年から現職。博士(経済学)

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 この記事は、週刊エコノミスト6月2日号の巻頭特集「緊急提言 コロナ危機の経済学」の記事をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

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エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。