産業医の現場カルテ

「1日中パソコン」腰痛を防ぐ“姿勢と休息の目安”

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 全国展開する流通業の会社で働く遠藤さん(仮名、30代男性)は総務を担当しています。事務所は都心部にあり、1日中パソコンの前で作業をしています。この会社の産業医である私は、遠藤さんが腰をさすりながら仕事をしているのが気になり、声をかけました。

 私が遠藤さんに声をかけたのは、従業員の健康や安全を守るための職場巡視をしたときでした。遠藤さんは「最近、仕事中に腰が痛くなり、つらいんです」と言います。2時間ほどパソコンに向かっているとだんだんと痛みが強くなり、作業が滞ることもあるそうです。

 厚生労働省の「業務上疾病発生状況等調査」によると、2018年に業務上疾病(仕事に関連して発症する病気)で4日以上休業した8684件のうち、腰痛が5016件で最多です。この状況は長年続いています。

 腰痛が多い職種は、介護職や看護師、製造業の現場労働者、タクシーやトラックの運転手などで、特に深刻とされています。ただ、それに限らず多くの職種でみられます。

 腰痛にはさまざまな原因があります。椎間板(ついかんばん)ヘルニアがもっとも知られおり、化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)や尿路感染といった感染症や悪性腫瘍なども原因となります。精密検査や継続的な治療、手術が必要なケースもあります。

 厚労省は「職場における腰痛予防対策指針」を示しています。作業姿勢として、事務職向けに、作業台(机)と椅子は適切な高さに調節すること▽同一の姿勢を長時間とらないようにすること――をポイントにしています。机の高さは、背筋を伸ばして座ったときに両肘を曲げた角度が90度になるように設定します。椅子の高さは、深く腰掛…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。