産業医の現場カルテ

転職者に多い?30代中途男性が「6月病」になったワケ

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 小野さん(仮名、30代半ば男性)は精密機器メーカーの開発職で、従業員約100人が在籍する事業所に勤めています。昨年4月に中途採用で入社し、3カ月目の6月にその会社の産業医である私と面談することになりました。小野さんの体調について、上司から相談があったからです。

 小野さんは前の会社でも開発職として10年以上の経験がありましたが、転職後、すっかり自信をなくしたといいます。面談では「開発の仕事は好きですが、頭が働きません。睡眠も浅くて、常に頭が痛く疲れています。内科に行きましたが特段悪いところはありませんでした。毎日、頭痛薬を飲んで出社しています」と話しました。

 面談時に、小野さんの入社以降の出勤簿を見せてもらいました。5月後半から1日3時間超の残業をしている日が増えていました。

 小野さんは、業務内容は難しくないものの、やったことが間違っているのではないかと不安で、仕事がはかどらないそうです。よく話を聞くと、入社直後の4月下旬に、社内の事務手続きを間違えてしまい、周囲に相談できる雰囲気ではなく、何度もやり直したのがきっかけになったようでした。それ以来すっかり自信をなくしてしまったといいます。

 私は、小野さんが「適応障害」の状況にあると思いました。適応障害は、転職などで環境が変わることで、それがストレスとなり、社会生活に支障をきたす病気で、誰にでも起こり得ます。自覚症状には、頭痛や睡眠障害、下痢などがあります。4月に入社し、しばらくして発症する適応障害を「5月病」や、最近では「6月病」と呼ぶことがあります。

 小野さんは、開発の経験は豊富ですが、新しい会社のル…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。