メディア万華鏡

コロナ禍の今「皇室のメッセージ」めぐり静かな論争

山田道子・元サンデー毎日編集長
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政府専門家会議の尾身茂副座長から、新型コロナの状況について説明を受ける天皇、皇后両陛下=東京都港区の赤坂御所で2020年4月10日(宮内庁提供)
政府専門家会議の尾身茂副座長から、新型コロナの状況について説明を受ける天皇、皇后両陛下=東京都港区の赤坂御所で2020年4月10日(宮内庁提供)

 「上皇さまがまだ天皇だったら、緊急事態宣言の3日後ぐらいになさっていたかも」と想像した。新型コロナウイルス感染拡大に対するビデオメッセージ。実際、今の天皇陛下に求める声が起きた。

 天皇陛下が即位1年を迎えた5月1日の毎日新聞朝刊で、政治学者の御厨貴氏は「国難とも言える状況だ。ビデオメッセージのような、より強い方法で発信してもよかったのではないか」と語った。

 「なぜコロナ禍に天皇からの『語り掛け』がないのか」と現代ビジネスのウェブサイト(5月13日)で問うたのは、共同通信社編集委員の大木賢一氏だ。大木氏は、憲法で「国民統合の象徴」と規定されている天皇は今その役割を果たさないのか、と。そして、皇室行事の中止で「見えない天皇」になりつつあり、国民の関心を取り戻すチャンスになるとして、ビデオなどによる国民への直接のメッセージを求めた。

 何も発出していないわけではない。天皇、皇后両陛下は4月10日、政府専門家会議副座長の尾身茂氏の説明を受けた際、「私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら、この感染症を抑え込み、現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」などと語った。宮内庁はこの発言を当日発表した。「非公式の場での『お言葉』が紙で出されるのは極めて異例のこと」(読売新聞5月1日朝刊)という。後に宮内庁のホームページにもアップした。

 大木氏はもちろん「政治色を帯びてしまう危険性」を十分承知のうえでメッセージの発出を求めている。しかし、第2次安倍政権になって「天皇の政治まみれ」は著しい。その最たるものが退位をめぐる経緯だった。前天皇陛下のビデオメッセージに端を発した退位は…

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山田道子

元サンデー毎日編集長

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。