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全人代で読むコロナ後の「デジタルチャイナ」の行方

趙瑋琳・伊藤忠総研主任研究員
習近平国家主席が出席した全人代の湖北省分科会=北京で2020年5月24日、新華社
習近平国家主席が出席した全人代の湖北省分科会=北京で2020年5月24日、新華社

 新型コロナウイルスの感染拡大で、3月から開催の延期を余儀なくされた中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が5月22日に北京で開かれ、28日に閉会した。国内経済の減速や米国との対立、世界的な感染拡大による外需不振など、内憂外患の下、多くの関心を集めた2020年の国内総生産(GDP)の成長率目標の提示は見送ることになった。

 李克強首相の政府活動報告は例年より短かったものの、4月に打ち出した2020年の経済運営の基本方針である「六保(六つの保障=雇用、民生、企業、食糧・エネルギー、産業・サプライチェーン、末端の行政運営)」を守るスタンスがより鮮明になった。

注目したいキーワード

 政治活動報告の中には、財政出動と金融緩和を軸にポストコロナの経済対策が多く盛り込まれている。中でも特に注目したいのは、中国政府がここ数年推し進めてきたデジタルエコノミーに関連するもので、中国のデジタルシフトの方向性を示す数々のキーワードだ(表参照)。

 振り返ってみると、中国政府は2015年秋に発表した「第13次5ヵ年計画」(2016~2020年)の中で「イノベーションによる発展」と題した成長戦略を掲げた。そこで重要となったのがデジタルエコノミーを推進することだった。

 デジタルエコノミーという言葉は、2017年の政府活動報告に初めて明記されてから毎回登場している。デジタルエコノミーに含まれるインターネットプラス(インターネットをあらゆる産業と融合する戦略)や、プラットフォーム経済、EC(電子商取引)、産業インターネットなどの用語も毎回言及されている。

ポストコロナの成長エンジン

 中国は国力のさらなる増大…

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伊藤忠総研主任研究員

 趙瑋琳(ちょう・いーりん)。1979年、中国瀋陽市生まれ。2002年に来日。08年東工大院社会理工学研究科修了、博士号取得。早大商学学術院総合研究所、富士通総研を経て19年9月から現職。専門は中国経済、デジタルイノベーションと社会・経済への影響など。プラットフォーマーやテックベンチャーなど先端企業に詳しい。早大商学部非常勤講師も務め、論文執筆・講演多数。近著に「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」(東洋経済新報社)。