藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

打つ手あるか「コロナ感染拡大中の中東」藻谷氏の分析

藻谷浩介・地域エコノミスト
  • 文字
  • 印刷
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。膨大なビル群の建設に携わる外国人労働者の間でも感染が拡大している(2018年2月27日、筆者撮影)
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。膨大なビル群の建設に携わる外国人労働者の間でも感染が拡大している(2018年2月27日、筆者撮影)

 中東は「世界の火薬庫」だ。シリア、イエメン、イラクでの悲惨な紛争に加え、イスラエル対パレスチナ、サウジアラビア対イラン、クルド人対トルコ・イラン・イラクといった骨肉の争いが続き、さらには米国とロシアも絡む。そこに今「新型コロナ禍」が加わった。中東の感染の実情はどうなっているのか。

 香港の投資会社グループ傘下の「Deep Knowledge Group」が調査した新型コロナウイルスに対して安全な国のランキングがある。検疫、医療体制、政府の危機管理能力、健康管理意識などを評価してつけたもので、1位から10位までは、(1)スイス(2)ドイツ(3)イスラエル(4)シンガポール(5)日本(6)オーストリア(7)中国(8)豪州(9)ニュージーランド(10)韓国--となっている。

 だが累計の死者数や最新の感染者数のデータから判断すれば、1~6位のうち日本以外はベスト10には入らないし、7~10位の方が日本よりは上である。イスラエル含む上位4カ国は、「高い危機対応能力」という国際的な“ブランド”をテコに実態以上の評価を得ているのではないか。

 欧米の旧西側諸国では、新型コロナウイルスでの人口当たりの死者数が圧倒的に多い(新型コロナの地政学<1>参照)。6月9日現在の人口100万人当たり死者数は、スイスは223人で世界ワースト12位、ドイツは106人で同21位、オーストリアは77人で同27位だ。これらの国を「安全です」と言われても、「何を今さら」なのである。ちなみに日本は7人で同95位だ。

 これに対して、イスラエルの人口100万人当たり死者数は34人で、ドイツの3分の1、オーストリアの半分以下で…

この記事は有料記事です。

残り1647文字(全文2347文字)

藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外109カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。