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コロナ禍でどうなる?20~30代の「持ち家志向」

渡辺精一・経済プレミア編集部
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 生涯で住宅にかかるお金は、教育、老後と並ぶ「3大支出」の一つ。家を買うか、借りるかは多くの人が悩むテーマだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、収入が急減し住宅ローンの返済が厳しくなる家庭が増えたり、外出自粛で在宅勤務が定着したりしたことから、住まいのあり方を見直す機運もある。改めて「持ち家と賃貸」について考える。

 「持ち家か賃貸か」は“永遠の論争”とされる。持ち家派は「家賃を払い続けるより、ローンを返済していくほうが得」と考え、賃貸派は「将来は不透明で、長期のローン支払いはリスクが高い」とみる。

 家計負担という点から考えよう。賃貸住まいの人が、住宅ローンを組んで家を購入する場合、家賃を目安に毎月返済額を設定することが多い。だが、新たに固定資産税がかかり、マンションなら管理費や修繕積立金の負担があるため、一般に住宅費はかさむ。頭金の支払いで貯蓄が目減りし、子の教育資金など他の支出への手当ても課題になる。

 だが、将来、住宅ローンを完済すれば、住宅費の負担は一気に軽くなる。年金生活で住宅費の不安がなくなるメリットは大きい。

 一方、賃貸では、住宅費は家賃だけに限定されるため比較的軽く、定期的な修繕費用を手当する必要もない。だが、家賃は老後もずっと払い続けなければならない。

 ただし、ライフスタイルや家計の状況が変わっても住み替えで対応しやすい面はある。長期ローンを組むと、その間に、失業や病気などで返済が難しくなったり、地震や水害で被災したりする可能性もあるが、賃貸ならこうしたリスクを避けることができる。

 持ち家と賃貸には一長一短があり、価値観や家計状況から合理的に判断すればいいということだろう。

 日本では長らく持ち家派が優勢だった。政府が持ち家政策を進めたことや、バブル期までは地価上昇が続く「土地神話」があり、買ったほうが得だったからだ。1970年代には、ライフステージにあわせ、社宅、借家、分譲マンション、戸建てへと住み替えていく「住宅すごろく」という言葉も生まれた。総務省「住宅・土地統計調査」によると、2018年の持ち家率は61%でこの40年間ほぼ変わらない。

 だが、バブル崩壊後の地価下落を経験し、最近は「所有から利用へ」という消費の流れもあり、意識のうえでは持ち家へのこだわりは薄れた。国土交通省「住生活総合調査」で、今後に転居を考えている人のうち「持ち家に住み替えたい」という割合の変化をみると、持ち家住まいの人は03年の82%から18年は63%に、借家住まいの人は52%から36%に一貫して減ってきた。

 ところが、実際は、若い年代のファミリー層を中心に住宅購入熱が強い。総務省「家計調査(2人以上・勤労者世帯)」で年代別の持ち家率をみると、40代以上の持ち家率には約20年間、ほぼ変化はないが、29歳以下では02年の18%から19年は33%に、30代では48%から66%と大きく伸びた。ローンを抱える29歳以下の人の平均残高は02年の602万円から19年は1698万円に増えた。

 これは、住宅取得を後押しする環境ができたためだ。ローン金利は長年の金融緩和で歴史的低水準にあり、政府は経済対策として住宅ローン減税を拡充させてきた。銀行は企業の資金需要が伸び悩むなかで個人向け住宅ローンを積極化させ、その結果、貸出期間は長期化し「頭金ゼロ」融資も可能になった。若い世代は共働き世帯が多く、夫婦で返済する「ペアローン」を組みやすい。「負担は軽く、ローンは怖くない」という意識がマイホーム取得に駆り立てている。

 コロナショックは、こうした「持ち家」志向に影響するだろうか。二つの変化が…

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渡辺精一

経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。