経済記者「一線リポート」

“安倍1強”で気になるコロナ下の「財政無責任体制」

大久保渉・毎日新聞経済部記者
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参院決算委員会で新型コロナウイルスの緊急対策について答える安倍晋三首相=国会内で2020年6月15日、竹内幹撮影
参院決算委員会で新型コロナウイルスの緊急対策について答える安倍晋三首相=国会内で2020年6月15日、竹内幹撮影

 新型コロナウイルスへの対応で、政府が巨額の新規国債を発行するにもかかわらず、長期金利が0%前後の低位で安定している。なぜなのか。

 それは日銀が4月27日の金融政策決定会合で、それまで「年約80兆円」としていた国債購入の目安を撤廃し、金利上昇を抑え込む姿勢を明確にしたためだ。コロナ禍から家計や企業を守るには、現金給付など政府の財政出動が必要だ。日銀は政府が安心して国債を追加発行できるよう、自ら環境を整えた格好だ。

 事実上の財政ファイナンス(中央銀行による国債の直接買い入れ)とも言える中銀と政府の政策連携は、欧米など主要国も実施している。新型コロナによる経済危機は戦後最悪になる見込みだ。失業者が町にあふれる最悪の事態を防ぐには思い切った財政出動が必要で、日銀の判断は危機対応策として妥当だと思う。

 コロナ前の日銀の国債購入ペースは年20兆円を下回っており、関係者の間では「どのみち80兆円を超す購入にはならない」と冷めた見方も少なくない。

 だが、黒田東彦総裁は会見で「10年物国債の金利を0%程度から上昇させない。それを実現するために国債をいくらでも買い入れる」と明言する。日銀の「長期金利を上昇させない(国債価格を下落させない)」というメッセージは極めて強い。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「ここまで力強く宣言すると市場の安心感につながる」と評価する。日本経済がコロナ前の水準に戻るまで3~4年にわたり新規国債の増発が必要と予想されているだけに、「コロナ発の金利急騰・国債暴落シナリオ」を打ち消し、国債取引に関わる人たちを安心させた意義は大きいと思う。

 問題は背に腹を代えられない…

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大久保渉

毎日新聞経済部記者

 1979年、ブラジル生まれ。2004年、京都大学総合人間学部卒、毎日新聞社入社。山形支局を経て09年から東京本社経済部。自動車などの民間企業、日銀、証券業界、金融庁、経済産業省、財務省を担当。15年から2年間は政治部で自民党などを担当した。19年5月から日銀、証券、金融庁を束ねる金融グループのキャップ。