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「課長に嫌われた」と思い込む20代女性の“悲観思考”

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
 
 

 飯田さん(仮名、女性・20代半ば)は、医療機器メーカーの営業課に所属しています。課は15人程度で、それぞれが取引先の病院を担当し、自社製品の営業や販売後のフォローなどを行います。

 彼女は第2新卒としてこの会社に入社しました。そのこともあってか、早く一人前になれるよう努力していました。ただ、通常は入社半年後には持たせてもらえる担当を、彼女は半年を過ぎても持たせてもらえませんでした。

 納得がいかず、上司のA課長(男性・40代前半)に、いつ担当を持たせてもらえるのか何度か聞きましたが、「もう少し様子をみましょう」という曖昧な回答しか返ってこないということでした。

メールの返信が「素っ気ない」

 飯田さんの話を聴く機会があった筆者は、具体的にどういうスキルを身につけたら担当を持たせてもらえるのか、A課長に聞いてみてはどうかと提案しました。すると彼女は、「A課長は私を嫌っているので無駄です。使えない部下と思われています」と涙ながらに答えました。このとき彼女は上司に嫌われていると思い込み、ほとんど出社できなくなっていました。

 筆者は「A課長のどのような言動から、“使えなくて嫌われている”と感じるのか」と質問したところ、次のような答えが返ってきました。

 飯田さんは「A課長にメールをしても返信が素っ気ない」と言います。これは彼女の認識からすると、「使えない部下に丁寧なメールを返信するのは時間の無駄と思っているに違いない」と受け取っているようです。また、ある時、旅行のお土産のお菓子を課の全員に配ったところ、A課長は手を付けず机に置きっぱなしにしていたということがあったそうで、これを彼女は「私が…

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産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。金融庁職員のメンタルヘルス対策にも従事する。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。