「略奪が始まると、銃撃が始まる」。トランプ米大統領が5月29日、インターネット交流サイト(SNS)に投稿したこの発言を契機に、SNS大手のフェイスブック(FB)やツイッターが、政治的な発言や政治広告の表現をどの程度まで許容すべきかの判断を迫られている。
ツイッターは警告、FBは容認
トランプ氏の「銃撃が始まる」発言は、米中西部ミネソタ州で5月25日に発生した白人警官による黒人暴行死事件を受けた抗議デモの一部が暴動に発展したことに対し、抗議デモの武力鎮圧を示唆したものだ。
この抗議デモは米社会にこびりつく黒人差別の是正を訴える社会運動に発展。トランプ氏の投稿は人種差別への抗議行動を抑え込む威嚇と受け止められ、人々の怒りを買った。
トランプ氏の投稿にFBとツイッターは対照的な対応を取った。
ツイッターは即日、トランプ氏の投稿に「暴力を美化している」との警告を表示した。ツイッターはこの3日前にも、トランプ氏が大統領選に関して「郵送投票は不正を招く」と主張した投稿に対し、「誤解を招く恐れがある」と事実関係の確認を促す警告ラベルを掲示した。
これにトランプ氏が「SNSが言論を抑圧している」と猛反発したが、ツイッターの対応は政治的圧力に屈しない毅然(きぜん)とした対応と受け止められた。
一方、FBは投稿を容認。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は5月27日、米テレビ番組で「民間企業は真実の裁定者になるべきではない」とツイッターを暗に批判した。
発端は「トランプ陣営の虚偽広告」
政治家の投稿や政治広告の扱いを巡る両社の姿勢の違いは、19年秋から鮮明となっていた。
トランプ…
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