
新型コロナの地政学(7)
新型コロナウイルスの毎日の陽性判明者数がおおむね60人程度と、4月中旬の10分の1になった日本。入院中の患者数も最悪期の10分の1となったが、一方で「秋以降の“第2波”到来に備えて」と多くの人が口にするようになった。はたして日本に“第2波”は本当に来るのか。世界各国の対応を見ながら、この問題を考える。
寒くなると再び流行するのか
この特別連載の第3回で紹介した国立感染症研究所の調査「新型コロナウイルス SARS-CoV-2 のゲノム分子疫学調査」によると、1月に中国人観光客が持ち込んだウイルス(中国経由・第1波)は2月中に封じ込められたが、3月に欧米から帰国した日本人の持ち込んだウイルス(欧米経由・第2波)が感染拡大した。
欧米経由のウイルスは、中国経由のものから遺伝子変異したものなので、同研究所のリポートにもあるように、両者は第1波と第2波に区別されるべきである。従って、次に日本に大きな感染拡大があるなら「第3波」ということになる。だが、今の日本の「第2波到来に備えて」という問題提起では、第2波と同じウイルスがはやるのか、再度変異したものがはやるのか、区別された議論は聞かない。
同じ欧米経由の第2波のウイルスが再度感染拡大することはあるのか。「気温が下がるとコロナの感染力も高くなる」という論文もあるが、封じ込め不能なレベルにまでなるとは限らない。南半球で今寒くなっている豪州やニュージーランドの数字を確認してみよう。
封じ込めに成功した国は多くある
図の通り両国では、秋から冬に向かうなかで、むしろ感染が収束してきた。両国は5月から段階的に経済活…
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