高齢化時代の相続税対策

「82歳資産家」コロナで実践した“私の働き方改革”

広田龍介・税理士
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛ムードが強まり始めた3月初旬のことだ。東京都心に住む資産家のAさん(82)は、自宅マンションにこもって、確定申告のため、自分の資産や収入の状況など資料をまとめていた。

 高齢者は重症化するリスクがあるとされ、人混みの多いところへの外出は避けるよう呼びかけられていた。Aさんはそれを守って、ほとんど自宅で過ごしていた。外に出るのは、食料品の買い出しと散歩ぐらいだった。

 だが、自宅に閉じこもって書類や数字と格闘しているうち、Aさんは、自分がストレスで精神的に参ってきたと感じていた。

 新型コロナの影響で2月末、確定申告の期間は4月16日までに1カ月延長されていた。時間は十分あり、焦ることはない。税理士も「ゆっくりまとめてくれればいい」と言っている。だが、Aさんは昔から期限や納期は厳しく守ると自分に言い聞かせ、ここまでやってきた。だから、今回も通常の期限内に申告するのは当然と考えている。

 ところが、どうしても作業に集中できない。

 なぜか。もともと外出好きではない。だが、出るなと言われると、無性に外の世界が気になってくる。旅行や外食ができないことに息苦しさを感じているのかもしれない。

 マンションが騒がしくなっていることもありそうだ。3月2日に小中高校が臨時休校となってから、マンションのエントランスや玄関、外の道路は子供たちの格好の遊び場となっている。気が散る要因だろう。

 幸い、Aさんは空気のきれいなリゾート地に温泉付きマンションを所有している。「そこに“疎開”しよう」というアイデアが浮かんだ。人口が密集し、感染リスクの高い都心から、安全な地方へと脱出…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。