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熱中症引き起こす「深酒・睡眠不足・朝食抜き」に注意

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
 
 

 新型コロナウイルス感染症は緊急事態宣言が解除され、従来のようにオフィスに出勤する人が増えています。そうした中、私が産業医を務める外資系企業の総務担当・菊地さん(仮名、男性)から「熱中症になった社員がいる」と相談を受けました。

通勤中に体調不良

 熱中症は、体が暑さに慣れない時期に起こりやすいと言われます。急に気温が上がった時は注意が必要です。梅雨が始まる時期、近年では5月下旬から熱中症になる人が増え、8月にピークを迎えます。

 菊地さんは「緊急事態宣言の解除後、社員がオフィスへの通勤を再開しました。6月に入ってすぐ、50代の男性社員が朝の通勤中に駅で体調不良を起こし、病院に運ばれました。熱中症だったそうです」と話しました。

 この企業は海外との取引があるため、その対応で深夜まで残業をする人が少なくありません。この50代の社員は、海外とのオンライン会議が重なり、熱中症になる前の数日間は帰宅時間が午後10時を過ぎていたといいます。

保つべきオフィス環境

 熱中症は、屋外の炎天下にいる場合に多く起こる傾向がありますが、室内にいる場合や、通勤時間帯などの朝晩の少し涼しいときにも起こり得ます。睡眠不足や前日の飲酒、朝の欠食が熱中症を引き起こす要因としてあげられます。高血圧などの循環器系の基礎疾患や糖尿病の人は、脱水になりやすいため十分に気をつける必要があります。

 菊地さんからは「熱中症になった社員は睡眠不足が重なっていたようです。今回は通勤中でしたが、社内で起こらないとは限りません。気をつけることはありますか?」と…

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産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。