藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

「スウェーデンの集団免疫戦略は失敗か」藻谷氏の検証

藻谷浩介・地域エコノミスト
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スウェーデンの首都ストックホルム。14の島の上に広がる海上都市(2016年9月4日、筆者撮影)
スウェーデンの首都ストックホルム。14の島の上に広がる海上都市(2016年9月4日、筆者撮影)

 新型コロナウイルスの毎日の陽性判明者数が、最悪時でも人口100万人当たり5人で、5月中旬以降、6月中までは1人を切っていた日本。一時期80人に迫っていた欧州の旧西側諸国や、最近100人を超えてしまった米国に比べて、封じ込めに成功した結果、国内に免疫はいきわたっていないと考えられる。対極が北欧のスウェーデンで、「集団免疫」の獲得を目指し、同じ数字が100人を超えても一貫して経済活動を止めない。これは正しい選択なのだろうか?

 感染から回復して免疫を持つ人が一定割合を超えると、その後の感染拡大は自然に封じられる。これが「集団免疫」だ。同国のストックホルム大学の試算では、新型コロナウイルスの場合、この水準に達するのは40%だというのだが、スウェーデン当局はその獲得を目指す戦略を取り、他の欧州諸国が行ったような厳格なロックダウンは実施してこなかった。

 人口1000万人のスウェーデンで、新型コロナの死者数は5000人を超え、人口100万人当たり522人という水準は日本の68倍。世界7位だ。英国やスペイン、イタリアは、ロックダウンをしていたのにそれより多いが、隣国のデンマークが104人、フィンランドが59人、ノルウェーが46人だから、北欧の中では死者数の水準は突出してしまった。

 それでも“医療崩壊”のニュースは聞かれない。だが死者の半数以上は介護施設入居の高齢者とのことで、「高齢者は集中治療室に入れてもらえない」との批判も出ている。しかし、現地在住経験の長かった日本人に聞くと、同国には「年寄りは先に死ぬもの」と割り切って考える人が多く、高齢者にも惜しみなく延命治療を施す日本の感覚は通じない…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外109カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。