
愛犬家の75歳男性Sさんは、85歳女性のY子さんと犬を通じて友達になった。2人が日課にしている愛犬の散歩は、朝夕同じような時間、同じようなコースを巡っており、休憩するのも同じ公園のベンチだった。そんなわけで、自然とあいさつするようになった。
自分の代わりに面倒を
Y子さんの愛犬コロちゃんが体調を崩したとき、Sさんが友人の獣医を紹介したことがある。コロちゃんの具合がすぐによくなったことがきっかけで、Y子さんからいろいろな相談もされるようになった。今では、愛犬の話から世間話まで、毎日おしゃべりをする仲だ。
ある時、しばらくY子さんの姿が見えなかった。Sさんは「どうしたのだろう」と気がかりだったが、数日後、いつものベンチでコロちゃんと一緒にいるY子さんをみかけ、一安心した。体調が悪く外出していなかったのだという。
するとY子さんは「私が死んだら、財産を全てあなたにあげます。もらっていただけますか」と意外な話を持ち出してきた。Sさんはびっくりした。
Y子さんは、すでに夫を亡くし、子もいない。持病があるうえ、高齢であり、万一自分が亡くなった後のコロちゃんのことが気がかりになっている。そこで、自分の代わりにSさんにコロちゃんの面倒を見てほしいという。すでに遺言書を書いたとのことだった。
他人の自分よりも親族の方に見てもらったらどうかと、Sさんは話した。だが、Y子さんは、妹は2人いるもののペットに関心はなく、きちんと面倒を見てくれるかが不安だという。その点、犬好きのSさんなら適任だと考えたという。
遺言書の種類は?
「でも、それでは私が妹さんから恨まれてしまいます」。Sさんは、やんわり…
この記事は有料記事です。
残り860文字(全文1556文字)
広田龍介
税理士
1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。