名家のルーツ

五洋建設「スエズ運河拡張」で世界に飛躍した水野家

森岡浩・姓氏研究家
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スエズ運河
スエズ運河

 準大手ゼネコンの五洋建設は「海洋土木に特化した建設会社」(マリコン)だ。国内での知名度はあまり高くないが、難事業といわれたスエズ運河拡張工事を成功させたことで、海外ではよく知られている。その功績はNHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」でも取り上げられた。

広島・呉で土木業として創業

 五洋建設の創業者は、水野家の4代目甚次郎(じんじろう)だ。水野家は戦国時代に毛利家の家臣だったが、武士の身分を捨てて帰農したのが祖で、江戸時代は安芸国宮原村(広島県呉市)に住んでいた。やがて医学を志す人物が出て薬の製造をはじめ、農家の傍ら医薬品の販売を行っていた。その販路は京から九州まで広がっていたという。

 江戸時代後期の当主3代目甚次郎は医師を兼ね、息子の佐蔵も医者にするつもりだった。しかし、1874(明治7)年に佐蔵が4代目甚次郎を襲名した直後、明治政府が呉市を軍港として開発することを決め、1886年には呉鎮守府の設置も決まった。このことが、水野家を大きく変えることになった。

 呉港に近い宮原村では田畑が海軍用地として接収され、多くの村民が海軍工事で人夫として働くようになった。そうした中、4代目は1890年に32歳で土木業に転身することを決意し、当時の呉で有力な土木会社だった神原(かんばら)組に設計・会計・渉外などの担当者として参加し…

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森岡浩

姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。