
新型コロナの地政学(9)
国内の新規陽性判明者数は、ゴールデンウイーク明けから1日100人を切っていたが、6月末より再び100人を超えている。だがあわてる前に、全国の数字だけでなく、地域別の数字も確認してみてはどうだろうか。
日本をひとくくりで考えると間違う
北九州市と広島市。ともに人口100万人前後の工業都市で、新幹線なら50分の距離だ。海沿いの狭い平地に、工場と繁華街が集積し、住宅が丘陵地をはい上る都市構造も似ている。しかし7月6日現在の新型コロナウイルス陽性判明者数の累計は、北九州市が252人に対して広島市が86人と、3倍近く違う。同じウイルス、同じ国内でなぜ差が出るのか。
筆者のような医学が専門ではない者がコロナ問題を分析することに対し、いろいろ批判をいただく。だがむしろ、感染症の知識だけで、個別の地域特性に対する知見なしに、国内外双方で地域差の大きいコロナ禍の現実を読み解くことはできないのではないか。
図は、国内の各都道府県と一部の大都市の感染状況を示したものだ。7月6日までの陽性判明者数の累計を、人口100万人当たりに換算することで、どの程度ウイルスが蔓延(まんえん)しているか、いないかが一目瞭然になる。
図中には、同じく7月6日時点でのいくつかの外国での感染の水準を、全国平均とともに横線で示した。これにより、日本を全国合計の数字でひとくくりで語ることの危うさがわかるだろう。世界でも特筆すべき低いレベルに感染を抑え込んだ台湾に匹敵する多くの地域から、感染拡大中の南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、モルディブ、ネパール、ブータン)に相当する…
この記事は有料記事です。
残り1895文字(全文2591文字)
投稿にはログインが必要です。
注目コンテンツ