
日本経済の回復軌道はV字形かU字形か、はたまたL字形か--。新型コロナウイルスの感染拡大による経済の急激な悪化は、緊急事態宣言の解除に伴う経済活動の再開で4~6月期に最悪期を脱した模様だ。
新型コロナウイルスの影響はまだ見通せないが、今後の焦点は底打ちしたとみられる日本経済が、どのような軌道を描いて回復していくかだ。そこにはいくつかのシナリオがある。
楽観的だったV字回復
まずは「V字回復」シナリオ。今となってはあり得ない楽観論だが、2月下旬のコロナショックの初期には、よく耳にした。根拠は、(1)地震や洪水などの自然災害と違って、道路などの社会インフラ、企業の生産設備などが壊れていない(2)金融システムが崩壊した2008年のリーマン・ショックと違って、急激な信用収縮が起きているわけではない--などだ。
感染拡大が収束しさえすれば、生産や消費などの経済活動が一気に再開し、急激な勢いで経済回復が進むとの見立てだった。
だが、現実には、新型コロナが、いつ収束するのかまったく見通しが立たない。今年の春ごろは、夏になれば感染拡大は収まり、新型コロナの恐怖など去って元の生活に戻る「アフターコロナ」の世界が予想されていた。
しかし、実際に待ち受けていたのは、感染拡大の恐れがいつになっても収まらず、新型コロナを常に意識しながら生活しなければならない「ウィズコロナ」の世界だ。
7月9~12日に東京都内の感染者が4日連続で200人を超えるなど、夏に入っても感染は収まらない。経済が底打ちした後、一気にV字回復するシナリオは現実味がなくなった。
景気のカギ握るワクチン
では、V字よりややなだらか…
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大久保渉
毎日新聞経済部記者
1979年、ブラジル生まれ。2004年、京都大学総合人間学部卒、毎日新聞社入社。山形支局を経て09年から東京本社経済部。自動車などの民間企業、日銀、証券業界、金融庁、経済産業省、財務省を担当。15年から2年間は政治部で自民党などを担当した。19年5月から日銀、証券、金融庁を束ねる金融グループのキャップ。