
焼き鳥店「コロナの半年」(2)
サラリーマンの街、東京・神田。JRの駅近くで焼き鳥店を経営する34歳店主は、新型コロナでつらい思いをしたこの半年、お客から「大変だねえ」とかけられたねぎらい、励ましの言葉を支えにしてきたと振り返る。
店は40席弱。コロナ前は来店客の半分が常連さんで、残る半分はネットの店紹介などできた新規の客だった。それが、今は8割が常連客だ。ありがたいと思うのは、コロナで一番苦しかった4、5月に、新たにリピーターになってくれた客が何人もいたことだ。
緊急事態宣言が出された時期、飲食店は「午後8時閉店」を求められた。解除後もしばらくは「10時閉店」。稼ぎ時の時間帯に閉店せざるをえなかった。神田の繁華街ではそうした営業制限に、一時閉店する経営者が多かった。でも、この焼き鳥店の店主は開店を1時間早め午後4時にして営業を続けた。
すると、開いている店を探して神田周辺の住民が何人も来店してくれた。それが緊急事態解除後も引き続き飲みにきてくれた。今は団体客はゼロ。「ネットでの宣伝や、客引きとかに頼っていた店は、本当に厳しいんじゃないかと思う」
支出の3本柱は人件費、材料費、家賃
この間、政府や東京都から支援策を受けてきた。給付金は250万円を受け取り、あと50万円もらえることになっている。3月、4月と月々百数十万円の赤字が出た。5、6月と人件費などを切り詰め、赤字を減らしてきたが、合計300万円の給付金ではもちろん足りない。
店の支出の3本柱は人件費、材料費、そして家賃だ。家賃は大家と交渉し、10%下げてもらったが、国と都の支援で、6カ月分は補助金が出ることになってい…
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今沢真
経済プレミア編集長
1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。22年4月に再び編集長に。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。