
新型コロナの地政学(10)
国ごと、地域ごとの感染状況に著しい差のある、新型コロナウイルス。加えて注目されるのが、死亡率(=陽性判明者数に対する死亡者数)にも、場所によって極端な違いがあることだ。このウイルスの、本当の怖さはどのようなものなのか。
「Go To キャンペーン」は大丈夫か
新型コロナウイルスの感染は、地球規模で拡大中である。毎日新たに陽性と判明する人の数は、20万人を超えるようになった。ちなみに、その3分の1にあたる6万人以上が米国民だ。日本国内でも、これまでで最悪だった4月中旬と同程度まで再び増加している。
そんなところに、東京都の発着を除くとはいえ、「Go To キャンペーン」など仕掛けて大丈夫なのだろうか。官邸の発想を代弁すれば、最近の陽性判明者には重症化しにくい若い世代が多いこともあり、全国を見渡して考えれば医療機関にはまだまだ余裕がある、ということなのかもしれない。入院者数(ホテルなどへの隔離含む)は、一番多かったゴールデンウイークのころの3分の1で、しかも多くの県ではゼロか数人だ。毎日の新規陽性判明者数も、人口当たりに直せば世界平均よりはるかに低く、主要7カ国(G7)の中では引き続き最低水準なのである。
他方で、この機会に大都市の接待型飲食店を訪れた客が、地方にウイルスを持ち帰る危険は否めない。それに次ぐのが、大都市からの客が地方の接待型飲食店にウイルスを持ち込む危険である。そこに実効的な歯止めをかけないまま観光交流を促進することは、3月中旬に欧米からの帰国者を隔離せずに家に帰してしまったのと同様、後々振り返って政府の自爆行為だったとされるかもし…
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藻谷浩介
地域エコノミスト
1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。