
小野さん(仮名、女性20代後半)は、人材サービス会社の派遣事業課に所属し、登録者に仕事を紹介する業務をしています。課員は10人。A課長(女性30代半ば)からの信頼も厚く、3カ月ほど前にサブリーダーに抜てきされましたが、そのころから仕事のミスが多くなりました。半年前に結婚もしたので、家事と仕事の両立で疲れがたまっているようでした。
突然「職場にスパイが!」と叫ぶ
あるとき、A課長は、小野さんの近くの席の課員から「最近、小野さんが独り言らしきことをよく言っている」という話を聞きました。独り言の内容は聞き取れないそうですが、ブツブツと言っているときは何か思い詰めている表情で、とても話しかけられる雰囲気ではなかったそうです。
そして、トイレから戻った小野さんが突然、自分のバッグの中身を次々と取り出した後、「やっぱりない!」と大きな声で叫ぶ事件が起きました。あっけにとられた周囲を気に留める様子もなく、A課長の席に勢いよく行き、「ここにはスパイが送り込まれていて私を陥れようとしています!」と、突飛なことを言い始めたので、A課長は驚きながら彼女を別室に連れて行きました。
小野さんはA課長に、「自分の行動が監視されていること」や「職場にスパイがいること」などを一気に話し出しました。A課長は戸惑いながらも「誰がなんのために小野さんを狙うと思うの?」と聞くと、彼女は真剣な表情で、自分の結婚相手の家系は特別な血統で、その家系を絶ちたい組織がテレパシーでメッセージを送ってくることや、3カ月前に転職してきた同僚が実は某組織のスパイで、自分が見張られているなどと、現実離れした内容を話したのです。
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