
A夫さん(47)は、従業員数約150人の婦人雑貨の製造販売会社を経営しています。取引先の百貨店に売り場を持ち、自社の販売員が接客しています。新型コロナウイルスの感染が再び広がり、ある百貨店では従業員に感染者が出たことから、1週間程度休業することになりました。これを受け、A夫さんは、この百貨店で働く自社販売員3人を休ませることにしましたが、その対応に悩んでいます。
休業手当の負担が重く
政府の緊急事態宣言で4月以降、取引先の百貨店は最長で約1カ月半休業したため、A夫さんの会社は大きな打撃を受けました。例年、新年度シーズンの4月から約2カ月間は、自社製品の需要が高まり、年間売り上げの5割を稼ぐ繁忙期です。今年はその大きな商機を逃してしまいました。金融機関からの借り入れで当面の運転資金は確保しましたが、今後の資金繰りが心配です。
休業期間中の従業員には給料の6割の休業手当を支払いました。緊急事態宣言が解除された後、6月に入ってから、国が休業手当の一定割合を助成する雇用調整助成金の申請をしましたが、まだ入金はありません。今後再び百貨店が休業するため、従業員に休業手当を支払うと、その負担が重くのしかかります。
また、雇用調整助成金には、休業した人数や日数について要件があります。新型コロ…
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井寄奈美
特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/