米国社会のリアル

"マスクが踏み絵に?"コロナに揺れる米国社会の今

樋口博子・ロス在住コラムニスト
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7月20日、ドナルド・トランプ氏のアカウントに投稿されたマスク姿の写真。11日の病院訪問時のものと見られる=ツイッターから
7月20日、ドナルド・トランプ氏のアカウントに投稿されたマスク姿の写真。11日の病院訪問時のものと見られる=ツイッターから

 米国のコロナ禍が、差別や貧困、政治的分断といった同国の根深い問題にさらなる影を落としています。2008年にロサンゼルスに移住し、地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動を行う樋口博子さんが、複雑に揺れる米国社会を読み解きます。

    ◇    ◇

 「あなたたちは愚かなsheeple(sheep+people)よ!」

 米カリフォルニア州がロックダウンとなった後の今年5月、私が頻繁に利用し、地元の日本人にも人気のスーパー内でのことです。店員からマスク着用を強制された中年の白人女性客が、「私にはマスクを付けずに買い物する権利がある」と着用拒否を正当化し、こう発言しました。

 この女性は、マスクを着用する店員や買い物客に向かって「(でっち上げを信じる)愚かな羊たち」となじったのです。その様子は、女性が録画した動画を通じてSNSで一気に拡散しました。

 この女性の発言は、連日メディアで流れるトランプ大統領の「マスクに対する認識」に呼応したものです。この女性が地元の保守的な共和党員で、熱烈なトランプ支持者であることもわかりました。

 この出来事で明らかになったのは、科学的根拠に基づく感染症対策からマスク着用を促す公衆衛生行政に対して、「個人の自由」と「行政への不信感」という非科学的根拠からマスク不要論を唱える勢力がいることです。マスク着用の是非が、共和党と民主党の支持者によって両極端に異なることも注目されました。

 世界最多の感染・死者数の拡大を抑えるため、連邦・州・郡の公衆衛生当局は、マスク着用への理解促進に、日々、労力と時間を費やしています。マスク文化が浸透している日本人には理解し難い状況…

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樋口博子

ロス在住コラムニスト

 兵庫県生まれ。ロンドン大修士(開発学)、東大博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期にロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、国際協力銀行、外務省、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。米国で2019年に独立。地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動をしている。カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチ氏(民主党)は夫。