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消えたインバウンド「沖縄・京都は大打撃」の数値分析

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
新型コロナによる外国人観光客の減少で人通りが少なくなった那覇市の国際通り=2020年3月9日、遠藤孝康撮影
新型コロナによる外国人観光客の減少で人通りが少なくなった那覇市の国際通り=2020年3月9日、遠藤孝康撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大で、訪日外国人旅行者がほぼ消え「インバウンド観光需要」は壊滅状態だ。このコロナ禍がなければ、2020年のその需要は年間5兆円を超えていただろう(19年は4兆8135億円)。これは当分の間は戻ってこないので、観光産業には大打撃だ。

 政府のGo Toキャンペーン事業は、国内旅行を振興し、インバウンド消滅をカバーすることを目的にスタートしたが、観光産業の救済は、日本経済が立ち直るために必要と考える。

インパクトが大きい10都道府県は

 インバウンド需要の消滅はどれくらいのインパクトだろうか。5兆円を名目国内総生産(GDP)(554兆円、19暦年)で割ると0.9%で、日本全体としては意外に小さい。

 しかし、都道府県別にみれば、インバウンド需要がなくなったインパクトはもっと大きくなるのではないか。そこで、観光庁が発表している都道府県別の旅行消費額(交通費、買い物代を含む、19暦年)を、都道府県別名目GDP(17年度)に占める割合で計算してみた。そのランキングを上位から並べると、以下のようになる。

 (1)沖縄県4.0(2)京都府2.6(3)大阪府2.1(4)北海道1.5(5)東京都1.4(6)山梨県0.9(7)福岡県0.9(8)千葉県0.8(9)奈良県0.7(10)大分県0.6(単位は%)。

 この数字は、経済活動全般に占める割合なので、少しミスリードかもしれない。そこで都道府県別の産業別内訳を調べ、宿泊・飲食サービス、小売り、運輸・郵便の観光関連3業種に占める訪日外国人の旅行消費額の割合を計算した。その結果は以下である。

 (1)沖縄県24.8(2)京都府20.…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。