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「共存に向かうのか? コロナと人間」藻谷氏の考察

藻谷浩介・地域エコノミスト
ブラジル・サンパウロの広場の子供たち。ブラジルでは感染が拡大している=2018年1月10日、筆者撮影
ブラジル・サンパウロの広場の子供たち。ブラジルでは感染が拡大している=2018年1月10日、筆者撮影

新型コロナの地政学(12)

 長梅雨の7月が終わった。もし東京オリンピックが開催されていたら、意外な涼しさと前評判以上の湿度の高さに、来日客は驚いたかもしれない。行事なき4連休に漂った喪失感に加え、感染者急増の新型コロナウイルスへの不安で、すっかり落ち込んでいる方もおられよう。だが最新の数字に向き合う筆者には、いつまでも土砂降りの雨が続くとは思えない。

新規陽性判明者数と死亡者数の関係

 そもそもの疑問は、「6月下旬からの陽性判明者再増加にもかかわらず、なぜ7月半ばを過ぎても日本の死者数は増えないのか」ということだった。そのうちに、同じ事態は日本以外でも起きていると気付いたのである。

 図の四つのグラフはいずれも、3月以降の毎日の、新規陽性判明者数を赤線で、死亡者数を青線で示している。前後7日間の移動平均とすることで細かい変動を消し、かつ4月ごろの最初のピークの最高点が同じ高さになるように、左右の軸のスケールを調整している。

 まずは左上の日本を見ていただきたい。6月半ばまでは赤線と青線が、2週間程度ずれつつ連動していた。しかし7月に入ると、毎日の新規陽性判明者数が4月のピーク時をはるかに上回ったのに、死者数がほとんど増えていない。

 「7月になってからの感染者は若者が大半だから」という説明も聞く。確かに6月末までの死亡者969人の年齢別内訳をみると、84%が70代以上で、40代以下は2%(累計19人)に過ぎない。3~4月と違って、高齢者介護施設や高齢入院者の多い病院などでは用心が進み、新たなクラスター発生も少ない。だが理由はそれだけなのか?

 厚生労働省のホームページからは、累計3…

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地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。