高齢化時代の相続税対策

60代で早世「妹の遺言書の意味は?」兄が抱えた悩み

広田龍介・税理士
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 Tさん(70)の妹M子さん(67)が肝臓疾患のため急逝した。数日前に体調を崩して入院したばかりで、あっという間の出来事だった。

信託銀行から「遺言書」の連絡

 M子さんは独身で東京都23区内の実家に1人で暮らしていた。2年前までは、母(93)と同居していたが、高齢の母の健康状態に不安が出てきたことから、M子さんがあちこち回って、しっかりケアしてくれる介護施設を探し出し、そこに母を入所させたのだった。

 施設にいる母は健在でいる。「本来なら、母を先にみとり、次は兄である自分の番。若い妹は最後のはずだったのに……」とTさんはM子さんの早すぎる死を悔やんだ。

 M子さんの葬儀を無事終え、Tさんが実家で郵便物や遺品の整理をしていると、信託銀行から「M子さんの遺言書を預かっている」という連絡があった。3年前の2017年に作成したものだという。

 思い当たる節があった。ちょうどそのころ、M子さんから「終活をしている」と聞かされたことがあるからだ。子供のいないM子さんはTさんの子供2人を可愛がっており、「財産はおいに残すようにしたい」といった話だった。

 だが、当時のTさんはM子さんの相続などずっと先のことで、その時には母や自分はすでに亡くなっているものと思い込んでいた。そうなれば、M子さんの相続人は代襲相続人であるTさんの子供2人になる。だから、Tさんは自然な話と聞き流し、気にも留めていなかった。

資産は「社会福祉法人に寄付」

 Tさんは、信託銀行に託されていた遺言書を確認した。M子さんの相続財産は、まず、亡父から相続し、母とTさん、M子さんの3人の共有名義である実家の土地・建物の持ち分。それか…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。