熊野英生の「けいざい新発見」

PCR検査が増えない理由に見る日本の根深い「組織病」

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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仮設テントのPCR検査場で検体採取などを行う平成立石病院=東京都葛飾区で2020年7月17日、長谷川直亮撮影
仮設テントのPCR検査場で検体採取などを行う平成立石病院=東京都葛飾区で2020年7月17日、長谷川直亮撮影

 新型コロナウイルス問題に対して、日本はなぜ2~3月の段階でPCR検査(遺伝子検査)を増やすことができなかったのだろうか。今になってその理由について、さまざまな目詰まりが起きていたことが指摘されている。

 コロナに感染しているのかどうかを検査して確認したいと保健所に問い合わせた人の多くが、検査を断られて立ち往生したことは、政府にとって痛恨のミスと言える。筆者は、今さら政府や厚生労働省を責めようというつもりはない。むしろ、それをケーススタディーとして、今後に生かしたいと考える。

 一国の首相が1日2万件のPCR検査を実施すると言っているのに、現場までその意思が届かず、誰もが必要と考えている手続きが実行できずに滞ってしまったのはなぜか。

PCR検査のボトルネックは何か

 PCR検査の目詰まりについて簡単に整理しておこう。まず、窓口になった保健所の数は過去二十数年で削減されてきた。そこへコロナが拡大して前線の窓口となったため、対応がパンクした。保健所側にも、検査を増やして陽性者が出ると、受け入れ先が見つからないということを考慮して、医療崩壊を防ぐために、検査を絞ろうという姿勢があったとされる。

 ただこの姿勢は、4月初めに厚労省が、軽症者や無症状者は自宅や宿泊施設で療養する方針に変えたことによって、医療側のボトルネックが解消され、変わっていった。また、政府はPCR検査の実施を民間にも依頼できるようにした。

 しかし、医療保険の適用にして、民間のクリニックにも依頼しようとしても、自治体から民間への委託契約がうまく進められなかった。医師の中には、検査に協力したいと申し出た人もいたが、検査機関から…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。