藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

インカ帝国「首都クスコ」今も宿るアンデス文明の魂

藻谷浩介・地域エコノミスト
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クスコの太陽神殿。インカ時代の精巧な石組みの上にモルタルを使ったスペイン時代の教会が建つ(写真は筆者撮影)
クスコの太陽神殿。インカ時代の精巧な石組みの上にモルタルを使ったスペイン時代の教会が建つ(写真は筆者撮影)

 インカ帝国の故地であるペルーでは、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だ。人口100万人当たりの死者数は800人を超え、サンマリノ(イタリア半島にあるミニ共和国)、ベルギーに次ぎ世界ワースト3位である。当面は旅行が難しくなってしまった同地だが、日本から遠く離れたアンデスの高原にあるインカの首都クスコを訪れた夏を、酷暑の日本から追憶してみたい。

 「カミソリの刃を差し込む隙間(すきま)もなく組み上げられた、クスコの石組み」という話を初めて読んだのは、古代文明の話がはやった1970年代の小学生のころだった。だがその後、筆者が海外旅行に出かけ始めた80年代は、ゲリラの跋扈(ばっこ)でペルーの治安は悪化。ようやく訪れることができたのは2017年8月と、本で読んでから40年以上も後だったのである。

 クスコの標高は3500メートル近い。17年3月にボリビアのラパスで、高地ゆえの呼吸と歩行の困難に辟易(へきえき)した筆者(「山上から発展 標高差800メートル“登山首都ラパス”」参照)は、今回は用心して行程を組んだ。成田から米国のヒューストン乗り換えで、標高2500メートルのボゴタ(コロンビアの首都)に入り、2泊して体を慣らした後に、週2便の直行便でクスコまで飛ぶことにしたのである。

 朝8時前にボゴタを出たアビアンカ航空のエアバス319機は、11時過ぎにクスコに着いた。赤とグレーでまとめられた同航空の機内は清潔で、乗務員はフレンドリーだ。今回は、ボゴタ―クスコ―リマ(ペルーの首都)―キト(エクアドルの首都)―ボゴタと4区間で一周する航空券をネットで購入したが、お値段は8万円とまあまあ安価だった。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。