熊野英生の「けいざい新発見」 フォロー

4~6月GDPでわかった「対コロナ持久戦」の本質

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
4~6月期GDPついて記者会見する西村康稔経済再生担当相=2020年8月17日、竹内幹撮影
4~6月期GDPついて記者会見する西村康稔経済再生担当相=2020年8月17日、竹内幹撮影

 2020年4~6月の実質国内総生産(GDP)は年率換算マイナス27.8%となり、リーマン・ショック時を抜いて、戦後最悪の下落となった。ただ、このニュースは少し注意して理解しなくてはならない。なぜなら、もちろん新型コロナウイルスの感染拡大が背景にあるものの、落ち込みの直接の原因は4~5月の「緊急事態宣言」で経済をストップさせたことにあるからだ。

 筆者は、経済活動を一律に止める緊急事態宣言を行えば、巨大な経済損失が発生すると警鐘を鳴らしてきた。だから、例えば再び新型コロナの感染が拡大し、10~12月にもう一度緊急事態宣言を行ったとすれば、4~6月よりさらに大きなGDPの落ち込みが発生する可能性もある。要するに、GDPだけを考えれば、再度の緊急事態宣言は極力やらない方がよいということだ。

4月の緊急事態宣言は仕方なかった

 冷静に数字を見てみよう。公表されている新規コロナ感染者数は4~6月よりも、この7~8月の方が多い。もちろん、死者・重症者数は4~6月の方が多かった。しかも当時は、これからどこまで感染が拡大するのか読めない恐怖感もあり、緊急事態宣言を出したこと自体は仕方がなかった。一方で、現在の第2波では、死者・重症者が第1波時ほど増えていないこともあり、7~8月は経済活動を停止していない。おそらく、7~9月のGDPは回復するだろう。

 そう考えると、やはり感染リスクを抑制しながら、経済活動を人為的に止めない方がよいということになる。一時的に経済活動を止めることは本質的な解決をもたらさない。4~5月に大きな犠牲を払って緊急事態宣言で経済を止めても、それを解除すれば結局は、感染者が増…

この記事は有料記事です。

残り937文字(全文1635文字)

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。